「あ……置いていきたくはないんですけど――」
 でも、持っていったとして、私が世話をしてあげられる余裕はない。
「ならばお持ちしましょう」
 高崎さんが優しく微笑む。
「でも、世話をしてあげられるかはわからなくて――」
「それなら高崎くんにフォローしてもらいましょう」
 栞さんが最後のアイテムをバッグに詰めながら話しに混ざる。
「これでおしまい!」
 と、荷物をリビングへ出すよう高崎さんにお願いする。
 高崎さんが戻ってくると、
「私はあの敷地内にある植物の管理係でもあるんですよ」
 と、教えてくれた。
「住民からのご要望がございましたら、ご自宅の植物もお世話させていただいております」
「彼、優秀よ? 意外とずさんな秋斗くんの家のベンジャミンやポトスが元気なのも、静兄様の家の植物が元気なのも、彼が世話をしてくれるからほかならないわ」
 あ――確かに、お部屋においてある植物にはホコリすらかぶってはいなかった。それが示すところは、きちんと定期的に葉っぱを拭いてもらえているということになる。
 でも、単なる間借りの身なのにそこまでしてもらっていいものなのか――。
 かといって、ここに置いていくのも気が引ける。
 ずっと一緒に過ごしてきた子たちなのだ。私がつらい時期も何もかもを見てきてくれた子たち。
「翠葉、甘えちゃいな。葵ってさ、俺が知る中では唯一翠葉と対を張れるくらいの緑バカだから」
 いつの間にか蒼兄がドア口に立っていた。