車を降りると、初老の方と数人のベルボーイが出迎えてくれた。
「木田さん、久しぶりです。急な予約で無理を言ってすみません」
「秋斗様、翠葉お嬢様、いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
 木田さんと仰る方は私たちの後ろに視線を移すと、
「いらっしゃいませ、総支配人の木田と申します」
「今日明日とお世話になります」
 蒼兄が言うと、唯兄も揃って頭を下げた。そして、唯兄はカードケースから名刺を取り出した。
「広報部の若槻です。お目にかかれて光栄です」
「あなたが若槻くんでしたか。お噂はかねがねうかがっております」
 そっか……。
 唯兄にとっては職場違えど、同じ会社の人といってもおかしくないんだ。
「木田さん、お久しぶりですっ!」
 栞さんが木田さんに話しかけると、
「栞お嬢様、ますますおきれいになられたのでは?」
 木田さんは柔和な笑顔をたたえて口にした。