「さ、荷物まとめちゃいましょう! 高崎くんは蒼くんを手伝ってね」
 栞さんの言葉に、蒼兄がものすごく嫌そうな顔をした。
 露骨に嫌な顔をするなんて珍しい……。
「頼む……葵、おまえだけは部屋に入ってくれるな」
「蒼樹、相変らずひどいな。俺だって少しは進歩するんだ。最近じゃ十回中五回くらいには減ったんだ。その成果を見たいと思わないのか?」
「思わない。十回中十回クリアしてからにしてくれ」
「……なんの話?」
 私と栞さんが顔を見合わせていると、
「葵が触ると機械が壊れるっていうジンクスがある。実際に何度やられたことか……」
 と、両手を使って数え出す。
「まぁ、それはすごい統計の持ち主ね? 高崎くん、とりあえず玄関と表を掃いてきてもらえるかしら?」
 栞さんの笑顔と同時に屋外退去を命じられた高崎さんは、渋々外へ出ていった。
 窓の外で靴を履くとこちらを振り返り、
「外の植物に水をあげてもいいですか?」
「はい、お願いします……」
 高崎さんは少し嬉しそうに笑ってお庭へ出た、
「彼ね、グリーンコーディネーターなのよ。だから、植物が気になってしょうがないのね。さ、持っていきたいものを片っ端から言ってちょうだい。全部詰めるから」
 腕まくりをした栞さんはとても頼もしかった。