「わかってる。彼女を乗せて無茶な運転はするつもりない」
 秋斗さんは私を助手席に座らせるとドアを閉め、運転席に回りこんだ。
 窓を開けて蔵元さんに視線を戻すと、
「秋斗様は時々薬を飲むのを忘れるので、さぼらないように見張っていてくださいね」
「はいっ」
 自分が飲むときに秋斗さんも一緒に飲めば問題ないだろう。
「翠葉ちゃん、そんな小姑相手にしなくていいから」
「……仲、悪いんですか?」
 右に秋斗さん、窓の外に蔵元さん。
 ふたり交互に見ながら尋ねると、
「悪くはないよ」
「秋斗様は私の上司なので、ただただ敬うばかりです」
 蔵元さんの言葉を聞くと、スー、と窓が上がってきて、
「じゃ、行こうか」
 と、秋斗さんが意識してにこりと笑んだ。