光のもとでⅠ

「翠葉ちゃん、俺と翠葉ちゃんは静さんからフリーパスをもらってる人間だよ?」
 秋斗さんの言葉に記憶を手繰り寄せると、うろ覚えではあるものの、概要は思い出すことができた。
「そのふたりが急に行くことになったとしても、満室でない限りはありとあらゆる融通がきく。そういうパス」
「……因みに、普通に泊るといくらくらいするんですか?」
 恐る恐る訊いてみると、それに答えてくれたのは唯兄だった。
「安い部屋で一泊八万だった気がする、秋斗さん、どの部屋とったんですか?」
「翠葉ちゃんたちが泊るのはロイヤルスイート。栞ちゃんたちはそのひとつ下。俺のは普通のデラックスタイプ」
「それはそれはまぁまぁまぁ――」
 唯兄は言いながらフェードアウトするかのように蒼兄の車へと乗り込んだ。
 その後ろ姿を見つつ、
「翠葉、金額のことは考えるのやめようか」
「……うん、そうする」
 蒼兄と引きつり笑いを交わす。