でも、譲れないの――。
「だから、逆にその人たちがツカサに近づけばいいと思った」
 名前の呼び方は譲歩できてもこの距離だけは譲れない。
 私が初めて見つけたかけがえのない人たちとの間に距離を置けといわれても、それだけは呑めない。
 自分から手放すなんてできない。考えるだけでも怖い――。
 もし、自分の居場所がなくなってしまったとしても、組織の中で必要とされない人間だとしても、自分に伸ばしてくれた手やつながることができたものを人の指図で手放すのは嫌。
「ツカサ……この話やだ。怖い――」
 桃華さんや飛鳥ちゃん、佐野くんや海斗くん。
 クラスメイトや生徒会のメンバー。
 ただでさえ、私の小さな手から零れ落ちてしまいそうなくらい、大切な人たちがたくさんいる。
 その人たちとの間に距離ができる。離れていってしまうかもしれない。