「ツカサ、これはなんだろう……?」
「翠にとってはどうでもいいこと。でも、俺にとってはどうでもよくないこと」
 声も表情も無機質に思えるのに、目だけは違った。
「……泣く?」
「っ……!?」
 瞳が揺れて見えたのだ。
「泣いてない。ただ……少し怖いとは思ってる」
「どうして?」とその疑問は声にならない。
 私がなんて答えたらその不安は拭えるのだろう。
 何か言わなくちゃ……。
「……何か嫌みを言うときには藤宮先輩って呼びたいかも?」
 泣きそうな顔よりは怒ってくれるほうがいい。
 だから、少し皮肉っぽい言い方をした。
「でも……できれば使いたくない。今の私にはその呼び方はよそよそしく思えるから。『司先輩』はケースバイケース。それがいいならそうする。でも、今一番しっくりくる呼び方は『ツカサ』なの」