「右に折れるカーブ――」
 それが何につながるのか……。
 じっとマンションのロータリーから伸びる道を見ていた。
「……距離は短いけど、翠葉ちゃんの家の前を通る道と少しカーブが似ているかな」
 背後から秋斗さんの声が降ってきた。
 その言葉にはっとする。
 そうだ、建物を視界に入れさえしなければ、歩道に植樹されている木や車道の曲がり具合が幸倉の自宅前の道と似ていた。
 そして、その道を走り去る車には覚えがあった。
「何か思い出した?」
 秋斗さんに顔を覗き込まれる。
「……いえ。ただ、見たことがあるような気がしただけなんです。具体的に何を思いだせたわけではなくて……。ただ、二学期になってから乗ったことがあるから、とかそういうことではなくて――」
 うまく説明することができなかった。