光のもとでⅠ

「……翠葉ちゃん、泣きそうな顔してる」
 そう言って、秋斗さんは今までツカサが座っていたスツールに腰掛けた。
「ふふ、泣かないですよ」
 少し声が震えていた。
 でも、泣けない。
 きっと、私が何かしたんだ。
 だから、ツカサの態度が一変したに違いない。
「私、ツカサが怒るような何かを言ってしまったんだと思います。ツカサは意味もなく怒る人ではないし、あんなふうに大声を出す人でもない……」
「……そうだね。ツカサが声を荒げるのは珍しい。でも翠葉ちゃん、人が声を荒げるときは怒っているときとは限らないんだよ」
 ……え?
「思っていることがうまく伝わらないとき。そういうときにだってイライラして声を荒げたりする」
 思っていることがうまく伝わらないとき……?