『かずさっ、でんわだよっ! かずさっ、でんわだよ!』
 なんともかわいい音声が、携帯の着信を教えてくれた。
「そろそろお呼びかな? ほいほーい!」
『和総、あと五分で戻って! 試合が始まるっ』
「了解っ」
 通話を切ると、新たに電話をかけなおす。
「あ、理美? 特教棟の一階から体育館に戻る。勝利の女神つきだから迎えに来て。頼んだよ」
 言うと、携帯をしまって先に立ち上がった。
「ほら、準決勝行くよっ!」
 手を差し出されたけれど、いつも差し出される手とは違う。
 節くれだっていて、ゴツゴツした手。
 蒼兄の手よりは大きく、お父さんの手よりは少し小さい。