光のもとでⅠ

「あっ、いたいた!」
 二階から顔を覗かせたのは河野くんだった。
「あのね、今ちょっとお話をしているから先に――」
 あ、れ……?
「先輩……?」
 気づけば先輩は階段を駆け下り、一階の出入り口から外へ走っていってしまった。
「お話途中だったんだけどな……」
 ひとりポツンと踊場に立っていると、「御園生ちゃん」と河野くんが踊り場まで下りてきて、私と同じように一階へ続く階段を見ていた。
「今のはさ、お話っていうんじゃないでしょ?」
「え……?」
「ま、内容的にはそれほど過激なものじゃなかったけど、あと少しで顔殴られるところだったじゃん」
 河野くんは壁に寄りかかり、じとりと私を見た。