光のもとでⅠ

 疲れがたまり始めているのか、最近は少し立っているだけでもすぐに眩暈を起こすようになっていた。
 そんなある日、ボイストレーニングをしてくれる茜先輩に言われる。
「翠葉ちゃん、もともと音程はいいのよね。でも、なかなか声が出るようにならないなぁ……。ちょっとこっちにおいで」
 言われて、ピアノの前に座る茜先輩のもとまで行く。 と、ポンポン、と叩かれて茜先輩の座る椅子の端っこに腰掛けた。
「ピアノの前は安心?」
「……え?」
「顔がね、そう言ってる」
 と笑われた。
 その、ふわりと砂糖菓子のような笑顔に緊張の糸が緩む。
「そうですね……。鍵盤の前はどこも同じ気がするから」
「じゃ、一緒に鍵盤の前に座って歌おうか? 本当は立ってるのつらいんでしょう?」
 言われてびっくりした。