どれだけ嫌だと言っても、すでに引き返せる状態ではないことを知るのに時間はかからなかった。
「一日目の午後からはライブステージ一本です」
 どうしてか、佐野くんが説明を始める。
「そんなの翠がもつわけない」
「ご心配なく」と微笑むこの人は、私の知っている佐野くんだろうか。
「姫と王子だけが歌うわけじゃありません。生徒会メンバーも歌いますし、フォークソング部、軽音部、コーラス部に吹奏楽部、それから和太鼓部の演舞やダンス部のステージも挟みますから休憩時間はしっかりと取れます」
 タイムテーブルを見せられ、珍しくもツカサが口を噤んだ。
「だから、紅葉祭は嫌なんだ……」
 ツカサはぼそりと口にして窓の外に視線を逸らした。
 タイムテーブルを見ると、びっしりと埋められているものの、確かにところどころで休憩が取れるように計算されていた。