「これ、翠葉ちゃんにあげる」
 ゆうこさんが手に持ったのは、テーブルの上に乗っていたフラワーアレンジメント。
「……いいんですか?」
「うん。お部屋に飾って? 小さめだから洗面所でもかわいいかも」
 笑って話すゆうこさんはとても幸せそうに見えた。
 笑顔がかわいくて、心が和むような笑みはまるでお花のよう。
「……嬉しい、ありがとうございます」
 ラウンド型のフラワーアレンジメント。
 全部同じバラだと思うのだけど、あまり見かけないバラだった。
 全体的には白く、花弁の縁だけがほんのりとピンクに染まっている。
「オーソドックスなラウンドアレンジなのだけど、このバラを売っているのが珍しくて、大人買いしちゃったの。だから栞さんにもおすそ分けでアレンジメント教えていたところなのよ。この子が生まれてきたら、また趣味どころじゃなくなっちゃうから」
 と、ゆうこさんは大きくなったお腹をさすりながらクスクスと笑った。
 もうすぐ臨月だろうか……。