「噛み付き方が尋常じゃないんだけど……」
「……ごめんなさい。でも、私、夏休みって夏休みなかったんだものっ」
「ま、ここにずっといたしな」
 相馬先生は少し同情の念を見せてくれたのに対し、ツカサは全く容赦なかった。
「病人なんだから仕方ないだろ」
「好きで病人やってないっ」
「誰も翠が好きで病人やってるとは言ってない」
 ああ言えばこう言う、そんなやり取りを就寝時間まで続けた。
 それが、退院前日の夜の出来事だった。