翌朝は栞さんの声で目が覚めた。
「おはよう」と、いつものように優しく声をかけてくれる。
「おはようございます」
 挨拶を口にはするけど、まだ頭の中がはっきりしない。
「ゆっくり休めたかしら? 昨夜帰ってきたときにはもう寝ついていたみたいだけど」
「はい。ここに帰ってきてすぐに横になりました。薬飲んで寝てから今の今まで一度も目が覚めませんでした」
「そう、ゆっくり休めたようで良かったわ。気分はどう? 体起こせるかしら?」
「どうでしょう? 横になってる分にはとくになんともないんですけど……」
 と、少し体を起こしてみる。
 不安を抱えつつ体をゆっくり起こす。と、完全に起こす前に吐き気に襲われた。
「無理しなくていいわ。横になって?」
 すぐにベッドに横になる。
「体起こすと気持ち悪い……」
「翠葉ちゃん、ちょっと携帯借りるわね」
 携帯を手に取りバイタルを見ていた。
「もう一度、少しずつ起こしてみましょう」
 栞さんは体を起こすのに、背に手を添えてくれたけど、
「ごめんなさ……。気持ち悪い」
「うん、もういいわ。横になって」
「嬉しくないでしょうけど、ものの見事に低血圧発作起こしてるわね。こうなると枕もつらいでしょう。外しましょう」
 と、すぐに枕を外してくれる。
 おかげで少し楽になった。
 ……眩暈とか、そういう域ではなくなった。