あの日のことはほとんど思い出せない。けれども、茜先輩との協演だけは覚えていた。
「後付けの記憶になら記憶はあるよ」
 ツカサと同じくらいの声で答える。と、
「ま、そういうことだから」
 と、資料の林と言われた方へ向かって歩きだした。

 パイン素材でできた書架はかなりの高さがある。
 そして、それらに収納されているのは白いファイルのみ。
 背表紙には年月日しか記されていない。
 きっと、生徒会活動の記録なのだろう。
 ツカサは左奥から順番に回り、
「この順で古いものから並んでる。俺たちが参考資料として使うのはこの列のファイルが多い。古すぎると物価が違うし、学校に立ち入る業者もほとんどが入れ替わっている。基本的には過去五年前までの資料を参考にすることが多い。ただ、例外が一部ある。秋兄が生徒会をやっていた一九九九年から二〇〇二年まで、ここは例外総集編って呼ばれてる。普段は使えないようなものでも、時々あり得ない参考資料になる。とりあえずはこの辺の予算案に目を通しておいて」