「翠葉ちゃん、今日はその格好のまま寝ちゃいなさい。明日着る洋服は私のものをあとで出しておくから」
「はい」
 静さんの方を向き、
「静さん、明日からお世話になります。今は無理だけど、でも、たくさん写真撮るので――」
 言葉は遮られた。
「待ってる。今預からせてもらっているものだけでもいい仕事をしているさ。今日は早く帰って休みなさい」
 と、穏やかな表情で言われた。
 それにコクリと頷き、司先輩の腕を頼りに歩きだす。
 栞さんとお母さんが玄関まで送ってくれた。
「明日の朝には仕事で出ちゃうけど、またすぐに会えるわ。翠葉は無理しないこと。いいわね?」
「うん」
「私も一時間くらいしたら帰るから。何かあったら携帯鳴らして? もちろんモニタリングはしているから」
「はい」

 静さんの家を出て、湊先生の家の前を通り栞さんの家の前まで来る。
 その隣、秋斗さんの家のポーチには照明が点いていなかった。
「秋兄が気になる?」
 気になるか、と言われれば気になるから目が行くのだろう。
 素直にコクリと頷く。
「メールでも送ってみれば」
 フルフル、と首を横に振る。
「……あまり自分を追い詰めすぎるのは良くないと思うけど?」
「追い詰めてる、かな……」
「少なくとも我慢はしてるんだろうし、無理とまではいかなくとも、気になる要素はあるんじゃない?」
「そっか……。私、ちゃんと我慢できてたかな……」
「だから断ったんだろ?」
「……うん、そうだよね」