廊下に出ると、ツカサはいつもみたいに少しの反動でドアから離れる。
 その瞬間がちょっと好き……。
 目が合えば、「遅い」と一言。
 待たせたうえに忘れていたとは言えない。
 ここはしっかり頭を下げて謝っておこう。
「ごめんなさい」
「……頭を下げられるほど怒ってない」
 そう言って、スタスタと歩きだした。
 その後ろ姿を追うと、
「さっき何話して――やっぱなんでもない」
 ツカサが言いかけてやめるのはものすごくらしくない。
「さっき、何……?」
「いや……何話してたのかと思って。後ろで海斗や簾条が俺を見て笑ってたから」
 河野くんとの会話のことかな……?