香乃子ちゃんは思いあたる節があるのか、黙り込んでしまった。
「香乃、どうする?」
 桃華さんの問いかけにも答えられない。
 今朝、お菓子の話でポンポン言葉を口にしていた香乃子ちゃんとは別人。――でも、同じ人……。
「七倉、一歩踏み出してみたら?」
 声をかけたのは佐野くんだった。
 佐野くんは教壇から下り、香乃子ちゃんの前に立つ。
「推薦ってさ、推薦した人の期待も信頼もかかってると思うんだよね」
 俯いていた香乃子ちゃんがその言葉に顔を上げた。
「相変わらずいいこと言うじゃない」
 と、桃華さんが佐野くんの隣に並ぶ。
「香乃、私も同感。それに香乃にならできると思うし、私たちクラス委員も安心して背中預けられるわ」
 それでもまだ香乃子ちゃんは答えられずにいた。