でも、そんなの都合よすぎるとわかっているから言えない。
「そっか、それで私は海斗に止められちゃったんだ?」
 真正面にいる飛鳥ちゃんがポロリと零す。
「そうそう、飛鳥はイノシシ並みだったからさ」
 海斗くんが笑って答える。
「聞いてのとおりよ」
 私の右側――後ろの席の桃華さんがす、と立ち上がった。
「それでも翠葉は翠葉。何も変わらないわよね?」
 桃華さんがクラスを見渡せば、「もちっ!」「当然」「あったりまえだぜ!」なんて声が返ってくる。
「何も変わらないから、そんな顔しなさんさ」
 そう言ってくれたのは海斗くんだった。
「あり、がと……」
 何か言わなくちゃと思ってかろうじて言葉にできたのは短い感謝の意を伝える言葉。