光のもとでⅠ

 ――自分で切った。
 ――ハサミで切った。
 ――左サイドの髪の毛を……。

 記憶はないけど、それが事実。
 春日先輩の手が頭に伸びてきてはっとした。
 身を引くより先に、
「優太、触らないでやって」
 ツカサが間に入り、春日先輩の手を遮ってくれた。
「言っておいたほうがいいんじゃないの? じゃないと簾条みたいなことになりかねないけど」
 メガネの奥にある目はいつだって冷静で涼しげ。
 その目が変わったのを一度しか見たことがない。
 八月八日、あの日だけ――。
 あ……あとは八月十三日。
 あの日、本音で話したとき、目に温度を感じられた。