「ただ、時間が決まっているから、翠葉ちゃんが中庭を利用するときには見かけなかっただけかもね」
 言いながら、木の根元の芝生に腰を下ろした。
「秋斗さんも芝生に座るのが好きですか?」
 秋斗さんはくすりと笑う。
「翠葉ちゃんが好きだよね? 芝生の上に座るの」
 ……そういうのも知ってるんだな。
「……はい。好きです」
「今まではなんとも思わなかったんだけどね、翠葉ちゃんに教えてもらったら好きになった」
 秋斗さんの甘い笑顔には少し困る。
 格好いい人は見慣れているはずなのに、どうしてか困る……。
「秋斗さんの笑顔はちょっと困ります」
「……どうして?」
「んー……格好いいから?」
 真面目に答えたのに笑われてしまった。