光のもとでⅠ

 携帯でわかるのは今現在のバイタルであって、過去に遡ったバイタルはパソコンやモバイルディスプレイからじゃないと見ることができない。
 今日の昼過ぎからのデータを見て愕然とした。
 彼女のデータでこんなに高い血圧数値を記録したのは、夜中に発作的な頭痛を起こしたときだけだったと思う。
 だが、今日の数値はその日よりも高いものだった。
 ほかに気づくことといえば、脈の著しい変化――。
 それがどういうことを示すのか、具体的なことは俺にはわからない。
 けど、司にはわかったのだろう。
 だから、話を早く終わらせようとしたんだ。
 切り上げて後日、というルートを選択しなかったのは、彼女の気持ちを優先してのこと。
 ――俺にはできない芸当だな。