「いえ、このバカは品種が違うので感染はしないと思います。というより、全力で感染を拒否したい」
「人のことバカバカ言わないでよっ。本当に気づかなかったんだから仕方ないでしょっ!?」
 翠から大声が返ってきた。
「……救いようのないバカだな。じゃ、俺は去る」
「相馬先生っ!?」
 相馬さんの発言は間違っていないし、何よりも賢明だ。
 翠は相馬さんの背中を見つつ、今にも身体を起こしてしまいそうで、少しひやっとした。
 それを引き止めるようにスツールに腰掛けると、翠はむっとした顔をしていた。
 ふざけるな、ムカついてるのはこっちだ……。
「気づいてなかったってなんだよそれ……。俺がすごいバカみたいじゃん」
 少々いい加減に翠へ視線を送ると、
「今、私のことバカバカ言ってたくせに……」
 言い返されて思う。