「……俺はあいつにバカと言ってもいいだろうか」
「俺が許可します」
 相馬先生は立ち上がり、真っ直ぐに翠の病室へと向かった。
 病室に入ると、相馬さんは腕組をしたまま翠を見下ろした。
「スイハ、おまえはバカだ」
「これ、俺と相馬さんの総意だから」
 翠は時間が止まってしまったかのようにびくともしない。
 やっと動いたかと思うと、苦笑を始めた。
 それも、何かをごまかそうとしている苦笑ではなく、なんでこんなことを言われているのかがわからないっていう苦笑。
「バカにつける薬はねぇ、ってことで俺はナースセンターに戻る。坊主、おまえ、あんまりスイハに絡んでるとバカがうつるぞ」
 そう吐き捨てた相馬さんは、すでに病室から退避しようとしている。