たぶん、相馬さんもこの事実は知らないだろう。
 ナースセンターに乗り込むと、
「なんだ?」
 と顔を上げた。
「相馬さん、あれ、絶対にバカだと思う」
 思わず翠の病室を指差した。
「ちょっと待て。話の前後が見えねぇ……」
「八日の日、翠……自分の身体がどんな状態にあったのか全く把握してないですよ」
「……まさか、あり得ねぇだろ?」
 相馬さんはパソコンのタイピングをやめて訊いてくる。
「嘘じゃなくて――」
 悔しい思いをギリギリと奥歯にこめる。