未熟者――その一言に尽きる。
 こんなに全身を痛がる患者を初めて見た。
 彼女の目は天井しか映していない。
 病室には彼女の不規則な息遣いと歯のガチガチいう音が響く。
「翠葉ちゃん、司から預かってきたものがある。サイドテーブルに置いたから、あとで落ち着いたら見てごらん」
 俺には、こうやって痛み以外へ意識を逸らしてあげることしかできなかった。
 そこへ術着のままの昇さんがやってきた。
「楓、代わる」
 息を切らせ、汗をかいているところを見ると、手術が終わってすぐに上がってきたのだろう。