「点滴にはビタミンも解熱剤も入れてある。ま、ゆっくり休むのね」
「(悪い)」
「くっ、見事に声まで出ないっていうのが笑えるわ」
 俺と同じ顔がケラケラと笑う様が気に食わない。
「あんたらしくないわね? いつもなら風邪をひきそうなときや風邪のひき始めはうちに退避するのに」
 気づけなかったとは口が裂けても言いたくなかった。
「あんたのその携帯は飾りもの? 不調に気づいたら、お母様をこの部屋に入れる前にメールくらいよこしなさいよ」
 あぁ、そうだった……。
「つか……ない。すいぼ……」
 なんとか声を出せてもこの様だ。
「くっ、何? もしかして水没させたの?」
 目尻に涙を滲ませ訊いてくる。
 くそっ――。