「それしか言えないわけ?」
「坊主、やめとけや」
 あんたが言わせているようなものだろ?
 ……たぶん、いなくても言っていたとは思うけど。
「俺、帰ります」
 誰に引き止められても帰るつもりだった。
 でも、誰にも止められることはなかった。
 足早に廊下を突っ切り、単調にセキュリティをパスしていく。
 全部のドアを通過し十階に停まったままだったエレベーターに乗り込み、ノンストップで一階まで降りた。