否――これを聞いている翠も俺も、針の筵に入れられたも同然だ。
 この人には藤宮の血が流れていないはずなのに、こういうところは容赦なく一族の人間らしい動きをする。

 前を歩くふたりから聞こえてきた会話――。
「こんなことやってたら、信じてもらえるわけがないよね……」
「秋斗さん……」
「ごめんって言わないでほしい。これ以上謝られるのは耐えられそうにないから。謝らなくちゃいけないのは俺――」
「違うっ……そうじゃなくて、今の私が今の秋斗さんに謝りたい」
 もう、やめてくれよ……。
 俺がおかしくなる――。