否、俺が翠の状態を知ったからその仕草を気に留めてしまうのか――。
 どれだけハイペースで話を進めても、翠は異を唱えない。
 話に入ってくるでもなく、じっと聞くに徹する。
「翠は、ほかの人たちは昇さんに呼ばせ、秋兄だけは自分で連絡するって言った。……それもひどい話だろ。髪を切ったことは確かに性質が悪いと思う。でも、だからといって、それだけを特別視する必要もなかったんじゃないの?」
 視線を合わせると、翠はきゅっと唇を引き結ぶ。
 まるで何かに耐えるように。
 不整脈――それが現況のストレスによるものなのか、気にはなる。気にはなるけど――嫌なんだろ?
 話をここで終わりにされるのが嫌なんだろ?
 なら、望みどおり最後まで全部話しきって終わらせてやる。