先輩とは距離にして一メートルちょっと。私が借りている客間よりも少し広い。
「具合は?」
「少しだけ気持ち悪いです」
 この手の薬を飲むと血圧が下がるし、どうしても吐き気が伴うのだ。そのことについては半分くらい諦めている。
 薬は良くも悪くも毒なのだから。
「吐き気止め持ってくるからちょっと待ってて」
 と、部屋を出ていく。
 あらかじめ、湊先生に指示されているのだろう。
 すぐに水を入れたグラスと薬を持って戻ってきた。
 薬を飲んだ直後、
「水分摂取少なすぎ。少しつらくてももう少し飲んで。そのほうが薬の効きもいいから」
 と促され、さらに水を口にした。
「あれ、飲みづらかった?」
 訊かれたのはハーブティーのこと。
「いえ、とても美味しかったです」
「じゃぁ、なんでこんなに残ってる?」
「少し飲んですぐに寝てしまったから……かな?」
「……そのあと、今の今まで一度も起きなかったってことか」
「ごめんなさい」
「別に怒ってない。冷めても飲めるものだから、飲めそうならまたあとで飲むこと」
「はい」
 先輩は立ち上がると、また先ほどの窓際に行き本を手に取った。