翠が首を傾げて訊くと、
「ずいぶんとふたりで話しこんでたからな。邪魔せずに帰るって、さっき昇と帰ったぞ」
「そうなんですね……。あ、相馬先生、この人が湊先生と楓先生の弟のツカサです」
 あぁ、何? 俺、今ここで紹介されるんだ?
「おぉ、電話の主な」
 稀に見る目つきの悪い男に見下ろされた。
 俺はスツールから立ち上がり、
「藤宮司です。相馬さんの論文はいくつか拝読しました」
「ほぉ、英語の論文読んだのか?」
「大学一、二年で習う医療英語なら独学で終わらせてます。わからなくても辞書さえあればなんとかなるので……」
「へぇ、ずいぶんと頭の出来がいいんだな」
 翠が「知っているの?」という視線を送ってくる。