「またお会いできる日を楽しみにしています」
 そんなふうに言って去っていったけど、
「……真っ平ごめんだ」
 ゼロ課が絡むことなどそうそうないはずなのに、「また」だと?
「次があってたまるか――」

 家に入りシャワーを浴び、夕飯を母さんと済ませてから病院へ行くつもりだった。
 しかし、出かける間際に母さんが言い憎そうに声をかけてきた。
「お父様が庵でお待ちなの……」
 じーさんが何……?
 きっと母さんは何も聞かされていない。ゆえに不安そうな顔をしているのだろう。
「わかった、寄っていく」
 ゼロ課の存在を知った直後ということもあり、嫌な予感を胸に庵を訪ねると、
「来たか」
「……何」
「コーヒーでも飲むかの?」
「このあと用があるから早く済ませたいんだけど」
「つれぬのぉ……。まぁ時間はかからぬわ」
 じーさんは髭をいじりながら言う。
「ゼロ課の存在を知ったとな」
 今年八十八になるというのに、目に宿る眼光は一向に衰えない。