おまえが殴りに来てくれたから、俺は帰るきっかけを得られたんだ。
「……まずは自分がすべきことを片付けないとな」
 携帯が知らせる彼女のバイタルはとても落ち着いたもので、血圧は低いものの処置が必要なほどではない。
 でも、こんな失態をやらかしたあとだ。
 俺が彼女に会えるのは当分先だと覚悟したほうが良さそうだ。
 それに、会いたいけれど、会ったところで何を話したらいいのかがわからない。
 先日、若槻が遊びののりで始めた録画だって、本人が目の前にいるわけでもないのに、俺は困って――気のきいたことも言えずに奥の部屋に逃げ込んだ。
 あんな録画を見て、彼女は俺をどう思っただろう。
 ……らしくない、よな。
 とりあえず、しばらくは逃避厳禁――。