「自分でもどうにもできなかったんだ……。おまえがインターハイに行っている間は緊張で身を持たせることができたんだけど、結果聞いた直後から魂どっか行ってた」
「それで車置いていくは、携帯の電源切るは、GPS不能だは……性質が悪い」
「あぁ、そっか……。俺そんなことまでしてたんだ?」
 妙に間の抜けた顔をしてそんなことを言う。
「っていうか携帯どこ? ちゃんと所持してるわけ?」
「……たぶん。どっかにはあると思うんだけど……」
「何それ……。朝食済んだら釣りの前に携帯捜索。そのあとはあの部屋の掃除。それが終わるまで釣りはお預け」
「……ハイ」
 昨日の今日だけど、全然普通。
 いつもと大して変わらない。
 秋兄は相変わらず変なところが抜けていて微妙に手のかかる人間だし、そんな秋兄を目の前にしていても自分はいたって冷静だし。