光のもとでⅠ

 稲荷さんの奥さんに声をかけられ二階のダイニングへ向かうと、別荘内が軽く掃除が済まされた状態であることに気づいた。
「稲荷さん、ありがとう。あとで釣りに行きたいんだけど、準備と案内頼める?」
「はい、秋斗坊ちゃん。階段の下のご用意しておきます」
 そう言うと、稲荷さんは別荘から出ていった。
 秋兄は朝食を前に、
「何日ぶりだろ、こんなまともなご飯」
「昨夜、コンビニのおにぎりなら食べただろ?」
「それはコンビニのおにぎりであって、これには敵わないよ」
 と、焼き立てであろうパンを指差した。
 ま、確かにそうなんだけど……。
 自分も席につき、用意された朝食に手をつける。
 さっき飲んだ缶コーヒーとは比べられないコーヒーの香りを肺の奥まで吸い込んだ。