「翠葉ーーー。大丈夫っ?」
 抱きついてきたのは飛鳥ちゃん。
「うん、あまり大丈夫じゃないんだけど大丈夫。ただ、これから少し欠席続いちゃうかも……。でも、大丈夫だよ」
「それ、全然大丈夫じゃないでしょう?」
「……桃華さん」
「私たちの前でくらい本音出しちゃいなさいよ」
「そうそう、こういうところで変に無理されてもこっちがつらくなるだけ」
 と、佐野くんは隣のベッドに腰掛けた。
「な? 言ったろ? もっと頼れって」
 海斗くんの手がポン、って頭に乗ったら、その拍子にボロ、と涙が零れた。
「本当は――すごく不安なの。でも……避けて通れないから……」
 しゃくりあげるものが邪魔して話が途切れ途切れになってしまう。
 すると、桃華さんがベッドに座り手を握ってくれた。
「会いに行くわ。翠葉の家まで」
 そう言って、にこりと笑ってくれる。
「そうそう、そうでもしないとこれがうるさくて敵わん……」
 と、佐野君が飛鳥ちゃんを指す。
「でも、来てもらっても私寝てることが多いから――」
「顔見て帰るよ。それができるだけでも安心」
 海斗くんは頭に乗せたままの手で「イイコイイコ」と撫でてくれた。
「でも、そんな、ちょっと行ってこようっていう距離でもないし……」
 直線距離はそこまで遠くはない。けれども、一応は県外であり、公共の乗り物を乗りついでくるとなれば一時間はかかる。
「だからうちに来ればいいって言ってるんでしょうが……」
 と、湊先生が話しに加わった。
「それはそうなんですけど……」
 どうしよう、頭が回らなくなってきた……。
「はい、そこまで。第一に優先するべきは翠の気持ち。でも、これはひとりで決めていい問題でもないから、あとで家族と相談すればいい」
 その場をまとめてくれたのは司先輩だった。
 体を起こすのを海斗くんが手伝ってくれ、立ち上がるときには司先輩が手を貸してくれた。
「マンションまで歩けそう?」
「チャレンジしてもいいですか?」
「別にかまわない。途中で挫けたらコンシェルジュを呼ぶまで」