「……明日は掃除から始めるから」
 秋兄は無言で俺を見たけど、嫌と言わせるつもりは毛頭ない。
 薬をサイドテーブルに置き、
「これで顔冷やして。加減せずに殴ったから腫れると思う。でも、謝るつもりはないから」
 秋兄から返事はない。
 まぁ別に、返事なと望んでもいないけど。
 おにぎりふたつとポカリスエット、薬を飲んだのを見届けてから自分は二階へ上がった。
 リンゴジュースとコーヒーを冷蔵庫に入れ、自分はソファに横になる。
 山の中ということもあり、日が落ちた今はエアコンなど必要ないほどに涼しい。
「……今日は風があるんだな」
 携帯を手に、深夜一時を回っていることを知る。
 翠には悪いことをしたと思う。でも、説明などできるわけもなく……。
「静さんがいたんだ。フォローはしてくれてるものと思おう」
 色々と考えたいことがあるはずなのに、頭は面白いくらいに働かない。