別荘に戻り救急箱の中を確認すると、内服薬から外傷の応急処置に使えそうなものまで、一通り揃っていた。
 自分の右手は、殴った直後に有無を言わさず手当てをされた。そして、さっき秋兄を殴った左手は、力を入れると多少痛いものの、腫れるほどではない。
「人と壁は違うってことかな……」
 手にコールドスプレーをかけ、秋兄には瞬間冷却剤を選択した。
 必要なものを持って一階へ下りるも、まだ室内には電気すら点けられていない。
「入るよ」
 中に入ると、俺に言われたとおりおにぎりをかじっている秋兄がいた。
「水分も忘れずに。それから、電気くらい点けろよ」
 ドア脇にあるスイッチを押すと、室内には羽が散乱していた。
 詳しく説明するなら、羽毛布団の羽とか枕の羽とか……。