先生は薬と一緒に鍵を持ってきた。
「うちの鍵よ」
「え?」
「翠葉の指紋認証は秋斗からデータもらってマンションの入り口のセキュリテイには登録済みになってるから。あとはその鍵と指紋認証でロックを外せばうちに入れるわ」
「あの……」
「学校が終わったらうちに行きなさい。秋斗のところにいるよりかは精神衛生上いいでしょ?」
「あ……なんだか申し訳ないです」
「栞のところでもいいんだけどね、栞が幸倉からこっちに帰ってくるよりも、私のほうが早いから。それに、うちのほうが医療機器が適度に揃ってるのよ。今日は授業が終わったら司が送って行くって言ってた」
「でも、先輩部活……」
「あんた送り届けて戻ってきても三十分ロスくらいよ。なんてことないわ。ほら、さっさと薬飲む」
 言われて薬を飲んでため息ひとつ。
 やっぱり学校は休むべきだったかもしれない。
 明日からは休もう。そのほうが周囲に迷惑をかけなくて済む。
 家にいてもどうせ寝ているだけだし……。
「翠葉が良ければだけど、うちから学校通う? そのほうが体の負担は軽くなると思う。今日みたいに午前中だけとか午後だけ出席するというのでもいいと思うわよ。そのほうが単位に響く率も低くなる。登下校は私が一緒だし」
「っ……そこまで迷惑はかけられませんっ」
 咄嗟に口をついた言葉。
 次の瞬間には両頬を湊先生につままれる。
「迷惑じゃないわよ。自分の患者が目の届くところにいると安心するの。それだけ。あとで蒼樹や栞、ご両親にも連絡してみんなで決めましょう」
 そう言うと、カーテンから出ていった。