笑みを浮かべた静さんが近づいてきた。
 心当たりはない。けれどいい予感もしない。
 こういうのはたいてい当たる。
 二人に気づかれないよう、ぐっと腹に力を入れた。
「翠葉ちゃん、こんばんは」
「こんばんは」
「あれ、それは?」
 静さんは翠の胸もとにあるとんぼ玉を指差した。
「今、ツカサからもらったんです。お土産って」
「良かったね、よく似合ってるよ」
「はい」
 翠は嬉しそうに返事をすると、もう一度俺に「ありがとう」と口にした。
「どういたしまして。……で、静さんの用事は?」
 ベンチに座ったまま、真正面にいる静さんを見上げる。