光のもとでⅠ

 やばい――心拍速まりそう。
 見なかったことにしようと思い、進行方向を変えた。
 ちょうど少し先にベンチがあったから、点滴スタンドを押しながらそこへ向かう。
 ……ちゃんとついて来いよ?
 ハナに付けるリードとはわけが違う。
 これを引っ張れば点滴が抜ける。
 ベンチに座ると、後ろからちょこちょこと翠がやってきた。
 そして、俺を見下ろしては、
「ツカサ、まさかとは思うけど、私のことをペットみたいに扱っていたりしないよね?」
「なんだ、やっと自覚したのか」
 笑って見せると、翠がわかりやすく怒りだした。
「ひどいっ! ハナちゃんはかわいいけど、私は一応人間なんだからねっ!?」
「へぇ、一応でいいんだ?」
 つい、意地悪心に火がつく。