「昇から聞いてんだろ? 相馬だ、相馬。お嬢ちゃんの主治医になりにきてやったぜ」
 なんとなく聞き覚えのある声に柄の悪さ……。
 っていうか、私、どこで寝て――あぁ、翠葉の病室だ。
 身体を起こすと、真先に趣味の悪いアロハシャツが飛び込んできた。
「ほら、嬢ちゃんの自己紹介」
「なんですってっ!? その悪趣味なシャツに相馬って――」
 翠葉の主治医って、まさかこの男なのっ!?
 趣味の悪いアロハシャツ男が振り返る。
「おぉ、麗しのお姫さんじゃないですか」
 間違いない……。
 このふざけた人間は相馬一樹だ。
 十年ほど前にしつこく付きまとわれた記憶がよみがえる。