大変申し訳ないと思いつつ、私からしてみたらどっちもどっちだった。
 少し困って引きつり笑いをしている中、治療が始まった。

 治療が終わったのは八時半過ぎ。
 消灯時間まで三十分を切っていた。
「先生、携帯ゾーンに――」
「「ダメだ」」
 ふたりに揃ってダメと言われた。
 確かに治療直後だし、了承してもらえるとはあまり思っていなかったけど……。
「今日はおとなしくしてろや」
「司からの手紙でも読めばいいだろ?」
 昇さんに枕元にある封筒を指差される。
 それを読むために携帯ゾーンへ行きたかったのだけど、聞き届けてはもらえそうにない。
 別に電話がしたいわけではなかった。
 ただ、なんとなくあの場所に行きたかっただけ。