光のもとでⅠ

「違う……少し休憩したいだけ。少し……気持ちや頭を整理したいだけ――」
 トイレから出て手を洗い、もう一度廊下へ出た。
「あのっ、休憩だからっ、だから携帯ゾーンへ行ってきますっ」
 私は四人の前を足早に突っ切った。
 ナースセンターには相馬先生がいたけれど、止まらず真っ直ぐに廊下を歩く。
 長い廊下の突き当たり、携帯ゾーンを見て思う。
「……携帯くらい持ってくればよかった」
 こんなとき、無性に蒼兄や唯兄の声が聞きたくなる。
 けれど、携帯もなければお金も持ってきていない。
 公衆電話はすぐそこにあるのに、回線をつなげる術を持たない。
 仕方ないから藤山に向かってずんずん歩いた。
 振動が痛みに響くけど気にせず歩く。
 ひたすら歩く――。
 今止まったら、次の一歩を踏み出せなくなりそうだから。