「カイロ? 鍼?」
 訊いてきたのはツカサ。
「鍼。先生が置き鍼してくれた」
 ツカサはそれを視界に認めると、先ほどと同じようにベッドに腰掛ける。
 相変わらず私の方に背を向けて。
 でも、右手は私の手が届く場所に置いてある。
 それは手をつないでもいいよ、のサインに思えた。
 躊躇せず、その手に自分の手を重ねる。
「じゃ、こっちはまた俺に貸してね」
 左側のスツールには秋斗さんが座り、私の手を大切なものを扱うように両手で包み込んだ。
「おまえたち……それじゃ翠葉ちゃんが飲み物も飲めないんじゃないか?」
 呆れたような静さんの声に、ふたり揃って手を引っ込めた。