「翠はテストが終わると急に幸倉の家へ帰ると言いだした」
 それはわからなくもない。
 期末考査の期間中は本当に最悪なコンディションだったから。
 シャーペンを持つのもままならず、直接持てないからタオルを巻いて痛みを緩和させていたくらいだ。
 その数日前に唯兄や蒼兄に幸倉へ帰りたいと言ったのも覚えている。
 幸倉に戻って気持ち心がほっとしたのも覚えている。
 なのにどうして――こんなにも関わりが深い人たちを忘れなくちゃいけなかったのかな。
 私の頭が追いつくのを待っていてくれるのか、ふたりは何も話さずに私を見ていることに気づく。
「あ、えと……幸倉に帰ったらほっとしたのに、お母さんもお父さんも帰ってきちゃって、どうしようって思ったのを思い出してました」
 慌てて話すと、
「親なんだから子どもが調子悪ければ帰ってくるのが普通だろ」