話は四月の出逢いまで遡ってしまった。
 秋斗さんからの提案で、ツカサも含めて話をしたほうが抜け落ちているものをすべて補えるだろう、ということで。
 ツカサは「は?」って顔をしたけれど、ため息をひとつすると、「わかった」と了承してくれた。
 そこで新たに、藤倉の市街へ一緒にでかけたのがツカサで、知らない人に声をかけられたときに叱ってくれたのもツカサだということを知る。
 柘植櫛を誕生日プレゼントとして渡されたいきさつや、ストラップをプレゼントしてもらったいきさつ。
 秋斗さんからは誕生日プレゼントに髪飾りをいただいているみたい。
 私の記憶は取り戻されるのではなく、どんどん色を塗られていくキャンバスのようだった。
 秋斗さんは時々クスクスと笑い、ツカサはどこまでも素っ気無く話す。
 何度か見たことのある柔らかな表情は一度として見ることができなかった。